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2004/01/17 
[主張] 阪神大震災の教訓語り継げ 災害に強い町へ備えは大丈夫か F.S 

傷跡は今なお深い
阪神・淡路大震災から、17日で丸9年。
時の経過とともに体験は風化しがちである。
しかし、6433人の犠牲者を出した大震災の体験は決して風化させてはならない。
私たちは、地震災害から逃れられない国の住民として、生命の重さと震災の体験を語り継ぎ、備えの重要性をかみしめる「1・17」としていかなければならない。

被災地には、高層の復興住宅が立ち並び、当時の惨状をうかがわせるものはほとんどない。だが、震災の傷跡は今なお深い。
「阪神大震災で家を失った被災者が入居する兵庫県内の災害復興公営住宅で、一人暮らしの入居者が誰にもみとられずに死亡する『孤独死』が、00年〜03年11月末の4年間で少なくとも251人(32人が自殺)」といった報道(1月9日「毎日」)に接すると、傷跡の深さに胸を締め付けられる。

阪神大震災は危機管理能力の欠如、被害を甚大にした縦割り行政の弊害、民間機関・国・地方自治体間の連携のまずさ、生活再建支援の貧弱さ……など、わが国の政治・行政の貧困・ゆがみを映し出し、多くの教訓を残した。震災から9年、教訓は、どう生かされたのか。今最も大事なことは、国、自治体、民間、地域社会の各レベルで、震災対策、防災対策を一つひとつ点検し、改革していくことに尽きる。

内閣府は今年、1年がかりで、国は震災にどう対応したか、国の施策や制度が復興にどれだけの効果をもたらしたかを総括検証するという。検証結果は、震災発生から丸Y年の節目を迎える来年1月、神戸市で開かれる国連防災世界会議で発表されるが、阪神大震災から得た教訓を十分に生かし、今後の日本のみならず世界の防災対策や復旧・復興対策に貢献するものとなるよう期待したい。

地震は天災である。しかし、それを人災にするかしないかは、政治や行政の対応で決まる。それが、私たちが阪神大震災から学んだ最大の教訓であろう。

大規模地震から人命を守るには、あらゆる施策を総動員して備える以外にないが、地震の犠牲者を減らす最重要の対策に「建物の耐震化」がある。阪神大震災で亡くなった人の8割以上は、建物の倒壊による圧死だった。政府の中央防災会議も、防災対策の重点を建築物の耐震化促進に置いているが、個人の住宅はもとより小中学校の耐震化でさえ大幅に遅れているのが実情だ。

災害時には避難場所ともなる学校施設の耐震化は、早急に進めるべき課題である。耐震化には多大な国費が必要だが、公明党は予算拡充に全力で取り組んでいる。費用も時間もかかるが、災害に強い町づくりを進める施策の核として最大の努力を注いでいかなければならない

共助社会の構築を
阪神大震災は、貴重な教訓として「自助」「公助」とともに、共に助け合う「共助」の大切さも教えてくれた。大震災では、救助を求めた人の8割に当たる約2万7000人が家族や近所の人の手によって救出された。全国各地からボランティアが駆けつけ、目覚しい活躍をした。日本の社会に根を下ろしたこの「共助」の芽をしっかりと育て、9年目の阪神大震災の日を期して、共助社会、ボランティア社会構築への取り組みをさらに加速させていきたい。

−−−「公明NET」より転載−−−