2002/08/28  Up
音楽療法士が活躍できる社会を (下) 兵庫県からの報告
 "効果の証明"が国家資格化促す 専門的な研究急げ
兵庫県の音楽療法への取り組みを調べようと7月1日、公明党女性委員会の音楽療法推進対策プロジェクトチーム(座長=沢たまき参院議員)のメンバーが公明党兵庫県議団とともに兵庫県庁を訪れ、井戸敏三知事らと懇談した。
この中で井戸知事は、神戸市内に来年オープン予定の「こころのケア研究・研修センター」(仮称)で音楽療法の専門研究を行う可能性を示唆した。

同センターは、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)を契機に兵庫県が取り組んできた「こころのケア」に関する中心的な研究機関。
特にトラウマ(心的外傷)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)についての実践的研究を行うとともに、専門的人材の養成、情報の収集・発信を目指す方針。
「センターで行う研究テーマの一つに音楽療法を取り入れる方向で検討している」と山田英樹同県健康福祉政策担当課長は意欲を見せる。

音楽療法士への関心が高まる中で、国の資格認定制度の確立が求められている。
国家資格化が実現すれば、療法士は社会的な認知を得て医療や介護などの現場で活躍できる。
さらに、音楽療法に医療・介護保険が適用されれば、診療報酬を得ることができ、職業の安定化にもっながる。

「そのためには、専門的な見地から音楽療法の持続的研究が不可欠」と山口陽雄(ひでお)向陽病院名誉院長は強調する。
「音楽療法に大きな効果があることは実感している。しかし、それを理論的に証明することは難しい。医療機関と大学などの研究機関との協力体制が必要」と訴える。

音楽療法の効果を理論的に証明することが国家資格化につながる
「こころのケア研究・研修センター」の試みは、その一端を担うものであり、今後、音楽療法に関心を寄せる各大学とも研究ネットワークを構築しながら、その研究成果を全国に発信する兵庫県の取り組みが期待されている。

(連載は、関西支局・香川育弘が担当しました)

▽心的外傷後ストレス障害(PTSD)
犯罪や戦争、自然災害などで心に大きな傷(心的外傷)を負い、1カ月を経過した後も精神障害が続くことをいう。
@夢、白日夢、幻覚などで心的外傷を繰り返し体験する
A心の傷となった体験が思い出せなくなる
B不眠、激しい感情の起伏、集中力低下
−−などの症状が見られる。

−−−「公明新聞」より転載−−−