今回は、自然災害による被災住宅の再建を支援するため兵庫県が創設を目指す「被災住宅再建支援制度」について解説します。
共済方式を軸に検討
足踏み状態の国の議論に一石
震災なら最高600万円支給
8年前の阪神・淡路大震災を契機に、被災者生活再建支援法の制定など災害被災者に対する支援策が拡充されてきたが、被災者にとって切実な住宅の再建支援制度の議論は、依然として足踏み状態が続いている。
こうした中、兵庫県はこのほど、自然災害で全半壊した住宅を再建する被災者に対し、公費と住宅所有者の積み立てを財源にした共済方式による県独自の支援制度の創設を目指すことを決めた。今後、制度化に向け研究会を発足させ、阪神大震災から丸10年を迎える2005年度からの実現を目指す。
兵庫県がこれまで全国知事会などで提案してきた案は、住宅所有者から掛け金を集める共済と公費を財源とする制度。住宅所有者の掛け金は1戸当たり年間2000円で、地震や噴火などで被災した住宅を再建する場合は最高600万円、風水害では同300万円の支援金を支給する。共済未加入者には支給しない。
研究会は学識経験者や被災自治体の代表などで構成し、4月以降に発足。
加入者の確保や掛け金の額、徴収方法、支給額、県財政への影響などについて1年かけて検討する。同県は「全国一律の制度実現に向け、モデルケースを作りたい」としている。
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全額公費負担の災害議連案
被災者の住宅再建に対する公的支援については、2000年10月の鳥取県西部地震で、鳥取県が住宅を再建する世帯に300万円を限度に補助金を支給したほか、01年7月には、県と市町村が拠出して基金を設置し、公費によって被災住宅の再建・補修を支援する制度を創設した。
また、超党派の「自然災害から国民を守る国会議員の会」(災害議連)は02年6月、全額公費負担で支援する被災者住宅再建支援法案をまとめた。同法案は、国と自治体の負担で最高750万円を支払うという内容だ。
これに対し、兵庫県が共済方式を軸にした制度創設を目指すのは、全額公費による支援は
(1)阪神大震災級の大規模災害の場合に十分な支援金が確保できない
(2)住宅を所有していない人の合意が得られない
――などの理由による。
ただ、共済方式の場合、掛け金の徴収方法に経費がかかりすぎるという指摘がある。災害議連も当初、共済と公費を組み合わせた制度の導入を模索したが、全額公費に変更したという経緯がある。
さらに、被災住宅の再建支援については「私有財産に公費を投入できない」という政府見解との整合性がネックになる。これに対し鳥取県の片山善博知事は、02年6月の衆院災害対策特別委員会に参考人として出席した際、同県が被災住宅再建に公費を投入した理由について「滅失財産の補てんではなく、地域を守るための手段」と指摘。政府に対して「杓子定規な考え方は変えた方がいい」と見直しを求めた。
被災住宅再建について公明党は、国会審議を通じて「国が特別のスキーム(枠組み)を作るべきだ」と主張するとともに、重点政策の中で「被災者生活再建支援法の住宅再建に関する改正、もしくは災害住宅被災者再建支援法の制定」など制度創設を積極的に推進している。
東南海・南海地震など大規模地震の発生が懸念される中、被災住宅の再建支援制度の議論を早急に煮詰める必要がある。兵庫県の取り組みは、政府や国会の議論に一石を投じるものと期待される。
−−−「公明NET」より転載−−−
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