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2016/04/25 
介護者の腰痛防ぐ新手法 福祉用具を効果的に活用 F.S 

受ける側の負担や不安も軽減 公明普及推進を約す

 “持ち上げない・抱え上げない”ノーリフトケア


 介護業務中に起きる疾病の約8割を占める腰痛。介護従事者の確保を阻害する要因の一つとなっている。そうした中、介護従事者の腰痛を防ぐ手段として、注目を集めているのが「ノーリフト(持ち上げない・抱え上げない)」介護と呼ばれる新たな手法だ。神戸市内でこのほど、ノーリフト介護を実演する教室が開かれ、神戸市議会公明党の北川道夫幹事長、軒原(のきはら)順子、沖久正留(まさる)の各議員が参加し、普及に向け関係者と意見交換した。

 「体をかがめ、腰だけで抱え上げようとすると、腰痛の原因につながります」。神戸市内で行われたノーリフト介護の実演教室。在宅や施設で介  護に携わる人たちが真剣なまなざしで一つ一つの手順を学んでいた。

 この介護教室を主催したのは、一般社団法人「日本ノーリフト協会」(保田淳子代表理事)。ノーリフト介護は「押す、引く、持ち上げる、ねじる、運ぶ」といった動作を、人力だけに頼らず行う技術で、同協会が2009年から提案してきた。看護師でもある保田代表理事が、オーストラリアに滞在していた際、現場に根付いていたノーリフト介護の理念に共感し、日本に持ち帰ることを決めた。オーストラリアでは、ノーリフト介護を導入した結果、人力による患者移動中の事故防止や腰痛の予防に効果が顕著だという。

 教室では、保田代表理事が、腰痛を最も招きやすいとされるベッドから車いすへの移乗を実演。通常、移乗では介護利用者の体を起こし、正面から抱え上げて、いすに座らせるのが一般的なやり方だが、ノーリフト介護では、福祉用具の活用や体の使い方を工夫し、腰への負担を軽減する。

 福祉用具は、食事などをサポートする電動ベッドを使用。利用者本人が背もたれを起こし、ベッド全体の高さを車いすの位置まで下げて地面に足を着け、起立介助の姿勢に。背もたれを起こすときの、あおむけから横向きへの体位変換は、介護者が腰だけでなく、足を前後に開き、重心を移動させながら行うことで全身を使った介助が可能になるという。

 最後に車いすへの移乗は、摩擦が少ないスライディングシートなどで滑らすように行う。利用者の体を電動で抱え上げるリフトでも代用できる。

 また、保田代表理事は介護利用者にもメリットがあるとする。「肩と膝を持って力任せに抱え上げようとすると、相手は不安を覚え、身構えようとするので全身の筋肉がこればってしまう。また皮膚の損傷などを引き起こすケースもある」と指摘。無理な抱え上げをやめた結果、筋肉の緊張が和らぎ、自力で体を支えられるようになった事例を紹介し、「介護は人の力で≠ニされてきた考え方を変えていく必要がある」と強調した。

 懇談の中で保田代表理事は、リフトなどの機械が介護保険で借りられることを紹介した上で、ノーリフト介護の文化″を普及させるため、セミナー開催などへの支援を求めた。

 北川幹事長らは、ノーリフト介護が定着している自治体もあるとして、「協会の拠点がある神戸市での普及を推進していきたい」などと語っていた。

−−「公明新聞」より転載−−−